Nokton 23mm F1.2 × FUJIFILM X-PRO3
Nokton 23mm F1.2 × FUJIFILM X-PRO3
撮る行為が愉しい。広角標準 NOKTON 23mm
フォクトレンダーから35mm、23mmと続けて登場したNokton Xマウント。
これは富士フイルムがX-PRO3に与えた「写真を撮る事そのものを楽しむ」というコンセプトそのままに、さらにフォーカスを合わせる楽しみも加えたXユーザー待望のレンズだろう。さらにその佇まいは、写真を撮る道具として愛すべきルックスで、いつでも肩に掛け持ち歩きたくなる。
これまで富士フイルムXマウントのレンズと言えばFUJIFILM純正オンリーだった。社外品であったのは中国製のみで、それなりに面白い描写のものや、とても良く写る大口径レンズまで様々だったが、最初は良くても質感のチープさからか、気持ちも乗りにくく長く愛用できるものは無かった…。
しかし、ここに来てようやく日本のレンズメーカーからもXマウントで登場しだした。電子接点も付いてFUJFILMが正式の認めたXマウントレンズと言えるだろう。
特にコシナ・フォクトレンダーのNoktonは魅力的で35mmは見送ったが、23mmは常に持つ歩けるスナップシューターとして発表と同時に予約し手に入れた。フィルム35mm判換算の35mmは私にとって標準と言える焦点距離。Leica MマウントのSummilux 35mm ASPH.は自身一番の愛玉ではあるが、レンジファインダーゆえに最短距離も長い。しかし当Nokton 23mmはAPS-Cの恩恵もあり最短距離も18cmと短く、非球面レンズも使用し近接での描写も期待できる。さらに大口径でありコンパクトと使う前から魅力たっぷりのこのレンズ、NOKTON 23mm F1.2 Aspherical X-mount。
まだまだ使い込めていないが、いつもの漁港など周辺を撮り歩き簡単なレビューを。
F1.2の開放から生まれる気持ちよい周辺減光
描写については、撮った先から分かるすばらしさだ。
自身の好みもあるがとても魅力的な写りで、ピントはかなり薄いものの、柔らかいボケのお陰で立体感も良く、被写体が気持ちよく浮き上がってくる。F1.2と言う大口径ではあるもののAPS-Cという事もあり、ドラスティックなボケ表現は生まれないもののその分、凛として聡明な写りを感じる。
さらに魅力的なのが、開放での遠景描写には程よい周辺減光が生まれ、もうこれは超の付く大好物なやつ。
良く写るだけではなくしっかりレンズの味わいもありもう嬉しい限り。
癖のない柔らかい描写がいい。最短18cm開放F1.2
NOKTON 23mm F1.2 Asphericalは最短撮影距離は18cmと大変短く、もう寄れないストレスはほとんどない。さらに非球面レンズを使い、近接もかなりよく写る。もちろん、マクロレンズのようなバキバキな解像度ではないものの、程よい収差もありクラシカルな描写も併せ持つ。何気ないテーブルショットも柔らかく趣がある。本来近接は、1段無いし2段ほど絞ればいいかと思うが、開放でのこの描写がフレアも効いて何とも言えず優しい。
X-PRO3のOVF撮影が生きるマニュアルレンズ。
Nokton 23mmはまさにX-Pro3に装着するべく生まれたレンズと言った佇まいだろう。
そしてX-Pro3のファインダーは光学OVFにし、小窓EVFを拡大表示でピーキングを使えばレンジファインダーのピント合わせと撮影感覚に近く、なんとも撮影が楽しくなる。電子接点もあることから撮影距離に連動しパララックス補正も行われる。
また全面のEVF撮影では、ピントリングの回転に合わせ拡大表示も自動で行うので軽快そのもの。社外レンズを装着しての撮影ストレスはほとんどない。
個人的に気になる点もある。それはオーバーインフ。
ライカレンズを始めマニュアルレンズレの撮影は、遠景を撮る際、すっと無限にピントを合わせフレーミングのみに集中するものだ。それが当レンズはオーバーインフのため、ピントリングを回し切ると無限で止まらずピントが合わない。AFレンズでは常にカメラ側がフォーカスを合わせため、動きの遊びも含めオーバーインフの機構になっているのは分かるが、マニュアルレンズの使い勝手としてはなんとも不便だ。
23mmという焦点距離なので開放であっても5メートルほどより先はほぼ無限でピントが合うもの。それが常にピント合わせを強いられることになる。もちろん高画素の現代において、気温の変化やカメラとの相性によってシビアなピントが求められての仕様だと思うが、遠景撮影で無限側にピントリングを回しきってしまうとピントが来ないというのは中々のストレス…。使い勝手として残念なところだ。
X-PRO3がNoktonと共に更に愛機になる。
私自身本当に数多くのカメラを使ってきて、今現在も仕事用を含めかなりの数のカメラを所有している。そんな中でX-Pro3は全く気を遣うことなく持ち歩ける唯一の存在だ。強靭なチタンボディは、雪山など過酷な環境に何度も持ち歩いたがほぼ傷一つない。
自分にとってカメラはいつでも持ち歩いていたい存在だが、Leicaなどは結構気を遣うカメラだ。M型は真鍮だし、SLはアルミボディだ。手に馴染みスレや傷などは愛着にもなるものだが、どこかにぶつけて凹みなどができた場合はもう心が病む(笑)
それに対してX-Pro3は本当に手軽に持ち歩けるカメラだ。程よい軽さの恩恵もある。レンズ一本つけっぱなしで、特にカメラバックに大事に入れ歩くこともなく、いつものトートバックなどにも気軽に放り込める。そんな気兼ねないところが愛機と呼べるポイントでもあるだろう。
そして、そのX-Pro3がさらに愛機となるレンズがNokton 23mm F1.2。35mm標準広角。コンパクトで大口径。長く愛せるレンズになるだろう。
またコシナ・フォクトレンダーからは35mmのマクロというこれまたにくいレンズも登場し、FUJIFILMの純正に無いラインで次々魅力的なレンズを出してくれている。まさにFUJIFILM Xに新たな息を吹き込んでくれていると言っていい。そしてますますX-Pro3が愛機として深くなっていくことだろう。