SIGMA FP × EVF-11
SIGMA FP × EVF-11
SIGMA FPでEVFが使える日
SIGMA FPがメジャーファームアップVer.3.00により、待ちに待ったEVFが使えるようになった。
と言いながら6月初旬のファームアップなのですでに一ヶ月以上は経っている。しかしながら予約してあったEVF-11が早々に手に入ったのは4月初旬で、それこそ2ヶ月もの間、使えないEVFとにらめっこしていたのでその道程は遠かった。とにかくSIGMA FPを購入するきっかけとなったのはこのEVFが使えるということが始まりなわけで、まさに、ついにこの日が来たといった感じである。
そのEVFの感触と、個人的熱い思いを込めてのレビューです。
超クリアなEVF
SIGMA ELECTRONIC VIEWFINDER EVF-11。とてつもなく長い名前をもつ当EVFだが、0.5型 368万ドットの有機ELというハイスペック。私の所有する中ではLEICA SL2の576万ドットには解像度的に及ばないものの、ファインダー倍率が0.83倍という高倍率で、抜けもよくクリアで驚くほど見やすい。
導入前、操作面で気になっていた点として、LCDとEVFの切り替えがアイセンサーではなくスイッチという点。LEICA M typ240時代の、外付けEVFはこのボタン切替式で、なんとも煩わしい操作感だった。撮影の際にファンダーを覗くのが日常なので全く自然ではあるが、再生や、設定を触るたびにLCDに切り替える必要がある。これがボタン一つ押すだけのことだが、ものすごく面倒くさいものだった。
しかし、SIGMA EVF-11では、この点、見事にクリアしている。
切り替えレバーがEVF側でも、再生やメニュー操作は背面LCDで行えるという仕様が用意されている。
逆に言うと、アイセンサーでないことで勝手に切り替わったりしないので大変都合がいい。撮影していないときに背面LCDは暗いまま。撮影者はファインダーを覗き撮影し、そのまま再生ボタンを押せば背面LCDで確認でき、操作メニューやクイックメニューもそのままLCDで操作できる。よくぞこの素晴らしい仕様を与えてくれたと感心した。
ファームアップの恩恵
さらに、当ファームアップにより大幅な改善が行われていて、FPLで搭載されたカラーモードやスクリーンショットなど、様々な機能がFPでも使える。もはやソフトウェア上でクリアできる部分はほぼFPにも搭載された形となる。画素数違いの同等モデルと言ってもいいくらい。しかも無償のファームアップによって。
まさにこれは企業姿勢だろう。長年愛用しているFUJIFILMにも言えることだが、新製品が出たら旧モデルとはおさらば、新しいの買ってねというメーカーではない。一製品を長く愛してほしいというユーザー側に立ったメーカーの心だろう。ひとことでファームアップなんて言っているが、その開発なんてものは莫大なお金と時間が投入されているものだ。それを無償で提供しているんだから実にすごいことだ。
さらに言うと、FPLのハード的な改良点となる、背面ダイヤルやスイッチ、ラバーカバーなどを有償ではあるが交換サービスを始めている。どこまで手厚いんだ。
SIGMA FP × EVFによる違法増改築感
ここまでベタ褒めのEVF-11ではあるが、このスタイルは正直褒められない。それは誰もが、いや、SIGMAもそう思っていることだろう。
35mm判フルフレームのセンサーに、LCDとスイッチを付けただけというミニマルな箱に、あとはアダプターを介してユーザーの使い方に合わせてカスタマイズできるというコンセプトで生まれたSIGMA FP。
その当初の仕様の中にはEVFというカスタマイズは存在しなかったのだろう。
もともとムービーカメラとしての様相だったFP。ケージに入れて、モニターは外付けのLCDを載せ、ボディは三脚やスライダー、はたまたジンバルに載せるなど、撮影現場に合わせてカスタマイズする事はあってもEVFを装着してスチールカメラとして使ってもらおうとは思っていなんじゃないかなと感じる。現に2年もの間EVFが登場しなかったわけで、その登場した形や装着方法は、中々の無理やりドッキング感。
さらにEVFはセンターのねじ込みで繋がっていて、ストラップをボディ、EVFの左右から取り付けると、剛性感に乏しく、首や肩にひょいと引っ掛けてぶらっと散策に出ようとはちょっとなりにくい。カメラとしてなんとも言えない形である。それがSIGMAらしいとも言えるが、厳しいものを感じる。
ファームアップ前に、動かないEVF-11を取り付けた姿に正直愕然とし、驚くほどテンションが下がったものだった。しかしながら今では、素晴らしいファームウェアのおかげで非常にクリアなEVFを覗けることで気持ちは持ち直している(笑)。
そして常々感じるのが、このSIGMA FPの画の良さである。様々な不満は次々と襲ってきても、画像を開くたびにすべてを許してしまうのがFP(笑)。それは、私自身がSIGMAの画が好みである事は間違いないが、この画作りはほかメーカーのカメラのどれとも違うわけで、本当に手放し難い存在である。
SIGMA画質のスチールカメラを作って欲しい。
EVF装着で圧倒的に撮影しやすくなったSIGMA FPではあるが、気軽に持ち歩く普段遣いにはEVFなしのほうがいい。EVF装着は、ガッツリ仕事撮影用の保険などに(謎)。スチールカメラとしてスナップにSIGMA FPを使う場合はボディだけで肩に掛けるのが作法だろう。
SIGMA FPを通して感じたSIGMAの良さ。メニューや操作性はカメラを扱いなれた者にとって良く出来た仕様だとつくづく感じる。まさにユーザーの側に立ってのものづくりを感じる。今回のファームアップも含め本当に応援したいメーカーだ。
個人的にはこの素晴らしいSIGMA画質で、ぜひ、しっかりとしたスチールカメラを出してほしい。
足しも引きもしないEVF搭載のボディで。
もちろん、コンパクトプライムシリーズのレンズが似合うように、ある程度コンパクトでなおかつSIGMAらしい美しいデザインで。SIGMAならきっと作ってくれるだろう。そしてそれは本当に多くの人に進めたくなるカメラになる事だろう。